人材派遣と業務委託の違いとは?
「自社で人手が不足している」といった悩みに対する解決策として、人材派遣や業務委託の利用が挙げられます。
どちらも社員にはコア業務に注力をさせて効率よく運営ができる点では似ていますが、どのような違いがあるのかは気になるところです。
そこで本記事では、人材派遣と業務委託の概要をお伝えしたうえで、それぞれの違いを解説します。
1.人材派遣とは
人材派遣は、派遣先企業が依頼した業務を、派遣会社に所属するスタッフに担ってもらうサービスです。派遣先企業は派遣会社と派遣契約を締結し、派遣スタッフは派遣会社と雇用契約を結びます。
派遣先企業は、派遣スタッフに対して指揮命令権を有しており、業務上の指示を出すことができます。一方で、派遣スタッフへの給与の支払いや福利厚生の提供、教育訓練を行うのは、雇用元である派遣会社です。人材派遣を利用すれば、企業は、自社で社員を雇用することなく、必要な期間・人数に応じて、人員補充が叶います。
ただし、人材派遣の受け入れ期間は、法律により“同一部署で原則3年まで”と、定められています。
人材派遣について、詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
2.業務委託とは
業務委託は、委託企業の業務の一部を切り出し、それを外部の事業者に委託するという、いわゆる外注の手段です。人材派遣とは異なり、委託企業と事業者とで雇用契約を結ぶことはありませんが、“請負契約”あるいは“委任・準委任契約”を結びます。
請負契約は、成果物の完成と引き換えに、依頼元である企業から事業者に対して報酬を支払う契約形態です。成果物の制作に要した時間や過程を考慮する必要はなく、成果物に対する完成責任を問うことができます。
委任契約は、成果物の有無を問わず、法律行為を事業者に委託し、その業務に対して報酬を支払う契約です。なお、法律行為に該当しない業務を依頼するケースでは、これが準委任契約になります。
3.人材派遣と業務委託の違い
人材派遣と業務委託は、どちらも社員にはコア業務に注力ができるメリットはありますが、契約の種類や報酬形態に差異があります。
▼人材派遣と業務委託の違い
人材派遣 |
業務委託 |
|
契約の種類 |
労働者派遣契約 |
業務委託契約 |
業務の指揮命令権 |
派遣先企業 |
委託先 |
料金形態 |
“派遣スタッフの実働時間×時間単価”+交通費で算出する |
委託内容をもとに委託料金を提示する |
社会保険の負担 |
不要(派遣料金に含まれている場合がある) |
不要 |
以下では、それぞれの項目について詳しく解説します。
①契約の種類
人材派遣では、企業と派遣会社とで“労働派遣契約”を締結します。その内容は、“派遣会社が雇用するスタッフを、派遣先の企業で働かせる”というものです。
業務委託を利用する場合は、企業と事業者とで“業務委託契約”を結びます。業務委託契約は、企業の業務の一部を、外部の事業者に委託することを取り決める契約です。労働力の提供ではなく、成果物の提供が目的となるのが特徴です。
②業務の指揮命令権
指揮命令権とは、労働者に業務に関する指示を出せる権限のことです。
人材派遣の場合、派遣先である企業に指揮命令権があります。つまり、業務について派遣先企業が指揮命令をできるわけです。派遣先社員と派遣スタッフが複数体制で運営する企業受付や、業務が多岐に渡る場合には有効です。
一方で、業務委託は委託元に指揮命令権はありません。そのため、業務運営ルールやコンセプトなどを委託元から委託先に情報を共有した後に、委託先で業務を遂行し、運営管理等も委託先の判断に基づき実施します。
委託実績が豊富な企業は運営ノウハウがあるため、委託先に一任しても高品質なサービス提供が期待できます。
③料金形態
人材派遣を利用した場合、派遣料金が発生します。派遣料金は、企業から派遣会社に支払うものであり、派遣スタッフに直接支払うわけではありません。
派遣料金は“実働時間×時間単価+交通費”で算出されるため、派遣スタッフの業務時間に応じて変動するのが特徴です。時間単価は、契約期間や業務内容などを加味して決められます。
業務委託を利用した際、企業が事業者に対して、報酬を直接支払うことになりますが、その支払方法は、成功報酬型・固定報酬型・複合型と、大きく3つのケースに分かれます。
成果報酬型は、審査業務などで“1件あたり〇〇円”といった形式で費用を請求される料金形態です。固定報酬型は、企業と事業者とで継続的な業務委託契約を結び、毎月一定額の報酬を支払います。複合報酬型は、成果報酬型と固定報酬型を組み合わせた料金形態です。一定の料金を支払ったうえで、成果が発生した際に追加で報酬を徴収されます。
業務委託の料金形態は、委託する業務の内容に応じて、使い分けられます。
④社会保険料の負担
人材派遣と業務委託では、どちらも企業と業務に従事する労働者が雇用契約を結ぶわけではないため、企業が労働者の社会保険料を負担する必要はありません。ただし、人材派遣の場合、派遣料金の一部に社会保険料が含まれている場合があります。
▼一般的な派遣料金の内訳と費用比率
- 社会保険料(10.9%)
- 派遣社員有給費用(4.2%)
- 諸経費(13.7%)
- 営業利益(1.2%)
- 派遣スタッフへの給与(70%)
上記の理由から、自社でパートやアルバイトを採用するより、派遣のほうが割高になるイメージをもたれるかもしれません。しかし、近年では時給相場も上がっており、年間の人件費をみた場合、ほぼ変わらない水準になっています。場合によっては、自社でパートやアルバイトを採用するよりも、割安になる可能性がある点は押さえておきたいところです。
参照元:一般社団法人 日本人材派遣協会
4.人材派遣と業務委託のどちらを利用すべきか
人材派遣と業務委託には、さまざまな違いがあることをお伝えしてきました。企業は、それぞれの特性を理解し、目的に応じて、適宜使い分ける必要があります。では、どのような状況で、利用すればよいのでしょうか。
人材派遣は、企業内で継続的に行われている業務に対して、一時的な人員の補充を図りたい際に有用です。また、臨機応変な対応が求められるような状況下で、スタッフに対し、直接業務指示を出したい場合にも適しています。
業務委託は、専門性を必要とするノンコア業務を外注したい場合に活用できます。また、品質の向上を図る際に、利用したいところです。
たとえば、受付業務であれば、受付の細かな対応をはじめとする業務指示を直接出したい場合は、人材派遣が適しています。一方で、受付業務に関する接遇経験のある方に業務を一任し、「企業の顔として立ってもらいたい」と考える場合は、業務委託を利用するのが適切です。
5.まとめ
この記事では、人材派遣と業務委託について、以下の内容を解説しました。
- 人材派遣とは
- 業務委託とは
- 人材派遣と業務委託の違い
- 人材派遣と業務委託のどちらを利用すべきか
人材派遣は、繁忙期のように、一時的に人員を補充したい際に有効なサービスです。一方で、業務委託は、業務の一部を切り出し、その業務の遂行と成果物の完成を目的とする外注の手段です。
両者は、自社の業務を第三者に依頼するという点では似ているかもしれませんが、業務の目的に応じて使い分ける必要があります。
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